追憶と連想の舟に乗って– category –
この舟は、目的を持たずに漕ぎ出した記憶と連想の旅です。
写真は記録ではなく、記憶の扉。言葉は、命の奥に触れるための儀式。
風景の奥にある感情、偶然の中にある意味、そして静かな感謝──
そんな断章をたどるために、この舟はゆっくりと進んでいきます。
ここには、五つの静かな航路があります。
それぞれが、記憶と感性の水面にそっと触れるための道筋です。
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追憶と連想の舟に乗って
「すばる連想」
星の記憶に触れた夜、連想の舟が静かに動き出す。 霧ヶ峰にて──昴が静かに光っていた夜 9月初旬、夜半に霧ヶ峰で夜空を見上げた。木々の間で静かに星が光っていた。 いくつもの星が寄り集まった姿が最初に目に止まった。昴だ。近くには牡牛座の角が見える... -
追憶と連想の舟に乗って
「小さな命との出会い」
記憶の中の海上の森は、僕のお気に入りだ。数年前の初夏、群馬から一時的に名古屋へ戻ったとき、懐かしいその森を歩いた。足元にふと目をやると、小さなトンボが舞っていた。 最初はかげろうかと思ったが、カメラを向けると、小枝に止まってくれた。緑に光... -
追憶と連想の舟に乗って
氷河の上空(オーロラの代わりの贈り物)
記憶の扉を開けようとしたとき、最初に立ち上がってきたのは、白いきらめきの記憶だった。 セスナの窓から見た、氷河の輝き。揺れる機体の中で、私は夢中でカメラを構えていた。 2012年9月3日、アラスカ。 その日は朝からデナリ国立公園を巡る予定だった。... -
追憶と連想の舟に乗って
目覚める記憶、黒のかたち
全身真っ黒なブラックマンタを見たとき、昔近くの森で初めてカブトムシを見つけたときのように心がはずんだ。「なんてかっこいいんだろう!」と、思わず声が漏れた。 その瞬間、自分の中に眠っていた何かが目を覚ました気がした。大人になるにつれ... -
追憶と連想の舟に乗って
命の長さにたじろがない記憶
美ら海水族館のジンベイザメ「ジンタ」は、今年で飼育三十年になるという。寿命は百年を超えるとも言われ、一緒に行った孫たちは、これから何度も彼に会いに来ることができるだろう。 巨大な体をゆったりと泳がせるジンタの姿には、時間の流れを超えた静け... -
追憶と連想の舟に乗って
沖縄の夜空に見つけたもの
天の川を撮りたくて、重いカメラを抱えて沖縄まで来た。だがその夜、雲の切れ間から見えたのは、久しぶりの北斗七星と北極星だった。しかもそれを見つけたのは、南国の夏空の下。 星の配置をたどるうちに、子供の頃、友達たちと一緒に星を見上げた記憶がよ... -
追憶と連想の舟に乗って
皆既月食の夜に見た、気づかれずにある美しさ
「夜中に皆既月食があるよ!」 そんな一言に背中を押されて、昼間のうちに手探りで撮影の準備を始めた。 月はどの方角に沈むのか?欠け始めるのは何時頃か? そして、"ブラッドムーン"と呼ばれる赤い月になるのは何時何分か? 今では、SNSやアプリがすべて... -
追憶と連想の舟に乗って
一枚の写真から始まった旅
ある日、現像ソフトの画面に、少しずつ浮かび上がってきた一枚の写真がありました。最初は真っ暗だったその画面に、水平線の島影、冥色の空、鏡のような海、そして小舟と少女たちのシルエットが現れたとき——私はその静けさの中に引き込まれていました。 「...
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