
「夜中に皆既月食があるよ!」
そんな一言に背中を押されて、昼間のうちに手探りで撮影の準備を始めた。
月はどの方角に沈むのか?欠け始めるのは何時頃か?
そして、”ブラッドムーン”と呼ばれる赤い月になるのは何時何分か?
今では、SNSやアプリがすべて教えてくれる。
昔なら天文台の情報や星座早見盤を頼りにしていたかもしれないけれど、今はポケットの中に宇宙の案内人がいる。
連続写真で月が地球の影に徐々に隠れていく様子は撮れなかった。
でも、初めて「ターコイズフリンジ」と呼ばれる青い帯を見た。
赤い月の縁に、ほんのりと青が差す。
それは、太陽の光が地球の大気やオゾン層を通るときに、吸収されなかった波長の光が月を照らすからだという。
科学の説明はあるけれど、目の前の現象は、ただただ美しかった。
私たちの周りには、実は気づかないだけで、美しいものが溢れているのかもしれない。
それは空の上にも、足元にも、そして人と人との間にも。
気づくためには、億劫がらずに、ほんの少し準備すること。
そんなことを教えてくれた夜だった。
